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cauris
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久々にポンピドゥーへ。espace315で、マルセル・デュシャン賞を獲得したTatiana Trouvé (1968-)の展示>。ひとつのスペースを黒の鉄柵で区切ったり、白い壁を新たにつくり、そこに小さなガラス扉や、永遠に続きそうな回廊を生み出すインスタレーション。黒い砂が壁からゆっくり流れ落ち、退廃した砂時計のごとく山となっている。ここで何かが起こっている、あるいは、起こった後のようなんだけど、それが何なのかが分からない。この場で本当に、今、化学変化のような現象が起こっているわけではない、現在形がぽろっと抜け落ちた感じがする。夢から覚めた後に思い出そうとしても思い出せないような、ひゅるひゅる逃れるイメージの影。彼女自身が”想像上のシステム”を具現化した、と言ってるように、システムそのものは見えるんだけど、それを使用する人間の存在感はごっそり拭き取られている。しかも、そのシステムが誰のために(人間なのか?)、どのような目的でつくられたのか、はっきり分からない。何もかもよくわからないのだけど、作家自身の明確なヴィジョンが伝わってくる不思議な作品。
by shinichitakeda | 2008-07-10 06:32
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